第14回香梅アートアワード受賞者作品巡回展
◆香梅アートアワード奨励賞◆
【選考理由】
佐藤和歌子氏は、日本画の伝統的な表現方法、技術に基づきながら、現代の自由な表現、世界観の確立を追求している、熊本市在住の気鋭の作家です。
日本画の中で描かれてきた「花鳥風月」の世界、その自然の美しさ、生き物のありようを「今」という時代に重ね、人間の内面を深く目差しながら、過去と現在をつなぐ繊細さと大きなスケール感を併せ持つ表現で多くの人々を魅了してきました。
内外での個展、グループ展での発表、受賞を重ね、中でも、ギリシア神話に基づき制作した作品《角の門》(2012年)が高く評価され、第44回日展特選を受賞されました。
また、現在は、これまでの数々の実績によって、母校である崇城大学芸術学部美術学科准教授として、後進の指導、育成にも携わっておられます。
日本画の新たな表現を追求する真摯な取り組み、独自性への評価、作家としてのさらなる飛躍と熊本の文化の発展への貢献を期待し、「香梅アートアワード奨励賞」を授与します。
【受賞者プロフィール】
崇城大学芸術学部准教授、日展会員、新日春展会員、熊本県美術協会会員、熊本県美術家連盟会員、熊本県文化懇話会会員
2002 第34回日展入選
2003 第58回熊本県美術協会展県美大賞
2005 第40回日春展入選
2006 崇城大学大学院芸術研究科修了 京展入選 「Ars Kumamoto アルス・クマモト-熊本力の現在」 (熊本市現代美術館)
2007 第6回福知山市佐藤太清賞公募美術展入選
2009 「熊本女性画家11人展」 (企画・ギャラリー武智 / 崇城大学ギャラリー) 「SoDA KIDS展」(崇城大学ギャラリー) 「九州ゆかりの日本画家たち展」(熊本市現代美術館)
2010 「気鋭の新世代・新グループ展 第2回清流会展」 (ツイン・アート・ギャラリー / 福岡市) 「
2011 「第三回小さな名品展」 (ツイン・アート・ギャラリー / 福岡市) 「SAAP-次世代の担い手たち展-」 (崇城大学ギャラリー) 「SoDA×川尻」(くまもと工芸会館)
2012 第44回日展特選、「第3回想楽SORA展」(熊本県立美術館分館) ハイデルベルク姉妹都市美術展 (ハイデルベルクセミナーセンター / ドイツ・ハイデルベルク)
2013 熊本県文化懇話会新人賞受賞、カプカプ展(県民百貨店) 第22回英展 ~人物・風俗~ 出品(田川市美術館/福岡) 第45回日展無鑑査
2014 改組新第一回日展特選
2015 佐藤和歌子「-猫展-」(長崎次郎書店 Gallery Jiro) 青木繁「海の幸」オマージュ展(MIZOE ART GYALLERY / 福岡)
2017 SOJO ART 「展開と展望」-日本画・洋画・卒業生作品展- (鶴屋 美術画廊 / 熊本) 佐藤和歌子日本画展-夜の博物誌- (崇城大学ギャラリー) 「黎明×瑲瑲」 (名古屋 タカシマヤ / 愛知) 佐藤和歌子日本画展-神話の雫- (つなぎ美術館)
2018 SOJO ART 日本画・洋画・卒業生作品展 「熊本を描く」 (鶴屋美術画廊 / 熊本)、第1回初春展(不言亭 / 熊本) 第1回安曇野涼風扇子公募展 招待出品 「黎明×瑲瑲 ニホンガノキズナ」 (加藤栄三・東一記念美術館 / 岐阜)
2019 SOJO ART 日本画・洋画・卒業生作品展 「熊本とめでたいもの」 (鶴屋 美術画廊 / 熊本)、想楽展 (不言亭 / 熊本) 「SoDA STORIES: EPISODE 19」 (熊本県立美術館本館) 「KISSYO 現代の吉祥画展」 (大阪高島屋・日本橋高島屋 JR名古屋タカシマヤ)
2020 SOJO ART 日本画・洋画・卒業生作品展 (鶴屋 美術画廊 / 熊本)
2021 第5回新日春展 審査員、第8回日展 審査員 画学生から日本画家へ崇城大学芸術学部1期生20年のKISEKI (SOJO GALLERY)
2022 「sparkle stones 日本画の現在展」(JR名古屋タカシマヤ) 「薫風扇子展」(犬飼記念美術館・熊本)
日本画をはじめたきっかけはなんですか?
高校生のとき、進学を考えるタイミングで、美術の先生から「美術で進学してはどうか?」と声をかけられました。そのような選択肢があるとは知らなかったのですが、目指したいと思いました。そして、崇城大学に芸術学部が出来るタイミングで、一期生として日本画コースに入学しました。
一期生というのは特別ですね。
専門的な勉強をしてきた人が多い中、私はゼロからのスタートで、基本的な美術の知識もなくデッサンも初心者レベルでした。授業についていくのがやっとで、吸収することばかりでした。
学生時代から大活躍でしたよね。
日本画の先生とモチーフの話をしたら「150号描いて日展に出してみないか」と勧められ、日展のことをよくわからないまま出品したのですが、最初に描いた150号が入選しました。そして、翌年には熊本県美術協会展で県美大賞を受賞。さらに、熊本市現代美術館が企画したグループ展で、熊本を代表する若手作家の一人として、国内外で活躍する熊本ゆかりのアーティストの方々の作品と一緒に展示していただきました。あまりにも場違いのような気がしていたのですが、当時の南嶌館長から「作家の一人として堂々と発表しなさい」と背中を押していただきました。
卒業後は、どのような道を選ばれたのですか?
大学の4年間では足りない、まだまだ出来ない、もっと学びたいと考え大学院に進みました。大学院卒業後、ギャラリー職員として勤務し、その後、崇城大学の非常勤講師として勤めました。2014年より美術学科日本画コースの専任教員として着任し、学生と共に創作を続けております。
尊敬する画家は、誰ですか?
女流日本画家の上村松園さんの描く人物の気迫に憧れています。それから、崇城大学教授で、日本画の師匠である中村賢次先生のように、大学で教えながら、日本画家として活躍できるようになることは目標のひとつです。
日本画の魅力は、どのようなところですか?
岩絵具の発色の素晴らしさと、物事の本質を描くところです。大学では留学生を受け入れているのですが、留学生たちも、日本画特有のざらざらとした岩絵具の質感と伝統的な技法に興味があるようです。
描いていて、うれしいときはどんなときですか?
98%苦しい想いをしながら描いていますが、そんな中、きれいな滲みができたとき、喜びがこみ上げてきます。また、作品を気に入っていただき、九州フィナンシャルグループの新社屋に30号と150号の作品を展示いただいているのですが、そういうことは、とてもうれしいです。
アートアワード奨励賞を受賞した感想をお聞かせください。
正直、まだまだなのに、今、頂いていいのかなという想いです。
今後の目標を教えてください。
描きたいモチーフがあっても、描きはじめると苦しくなることがほとんどです。描きたいのに、描けなくて、近づけないことがつらくなります。それでも、毎日、絵筆を持つことを心がけて、出来るだけたくさん、新しい表現方法にも挑戦していきたいです。動物を描いていきたいのですが、細かい筋肉の動きなどは、しっかり視てスケッチしてからでないと描けません。写真ではダメなのです。ですから、日本にはいない動物を描くために海外にも行ってみたいです。
◆香梅アートアワード奨励賞◆
gaju
【選考理由】
長年にわたり熊本を拠点に制作を続け、多くの人に親しまれているgaju 松岡志保氏の作品は、美術館やギャラリーでファインアートとしてのみならず、演劇、ファッション、公共・商業施設など、多種多様な空間で主役としてはもちろん、時には主役を輝かせるための名脇役として存在感を高めてきました。
お菓子の香梅人吉店を訪れると、人吉産の桃を使ったお菓子「人吉桃子」にちなんでお菓子の香梅 副島隆会長が書き上げた物語「人吉桃子のももがたり」の冊子とその物語に登場する15体の人形が目を引きます。この生き生きとした表情豊かな人形を制作したのもgaju 松岡志保氏です。
土地の歴史や文化を汲み取りながら常に新たな表現を探求し、挑戦を重ねながらオリジナリティあふれる作品を生み出すことで、美術と地域の振興にも貢献してきたgaju 松岡志保氏の活動をたたえるとともに、今後のさらなる飛躍を期待し「香梅アートアワード奨励賞」を授与します。
【受賞者プロフィール】
gaju
「時の経過の不可思議」を創作の原点とし、粘土を主に、様々な素材を織り交ぜたオブジェを制作。県内外にて個展、企画展で常に新作を発表するとともに、立体イラストレーション、ブライダルドレスの制作、舞台美術、公共施設・店舗の空間に至るまで、その仕事は多岐にわたる。
1995 播正ますみ氏に師事
1996 約100日間、ロンドン・デュッセルドルフにて、 フラワーデザイン・陶造形・ポーセリンペインティングを学ぶ
2002 造形作家 gaju (がじゅ)として活動を始める
2004 ビエンナーレKumamotoにて初出品で入選
2005 劇団きらら「INDEX」造形ライブで参加(熊本・福岡)
2008 企画展「まいらいふ展熊本に舞い降りた天使たち」 (阿蘇白水郷美術館 / 熊本) 企画展「ありがとうのあしあと展」(熊本市現代美術館GIII) 企画展「ありがとうのあしあとのあしあと展」 (島田美術館 / 熊本市)
2010 阿蘇くまもと空港第4、第5搭乗口聖面オブジェ 「熊本の偉人、祭シリーズ」10体を制作 天草本伊曽保物語より「ESOPO」絵本の中に登場する 造形200点以上を制作
2011 企画展「gaju展 ima,coco 6゜の果実」 (福岡市文化芸術振興財団 / リバレインアートリエ) 「踊りたいのに踊れない」舞台美術を担当(座 高円寺 / 東京) 個展 「ベッドに帰るように」(SUNDAY ISSUE / 東京) 「夢あかり」 天井オブジェを制作(熊本城城彩苑 / 熊本市)
2012 人吉球磨ものがたり銘菓「人吉桃子」 29人のキャラクターデザインと人形制作を担当 (お菓子の香梅企画商品 / 人吉球磨地域の観光ガイドブックと 桃のお菓子のセット)
2013 絵本「ESOPO」のオブジェを展示するため巨大宝箱を制作 (天草コレジヨ館 / 天草市)
2015 「タイムカプセルジャーニー」アートオブジェを担当 (ネスレネスプレッソ株式会社 / 表参道ヒルズ / 東京)
2016 個展 「瞬きの証」(島田美術館 / 熊本市)
2017 銀座通り花火エントランスオブジェとして5m超の松を制作 (ジャスマックビル / 熊本市)
2018 旅館善屋 エントランスオブジェ 「清正」を制作 (山鹿市平山温泉 / 熊本) 「Exhibition 9sense ARTS vol.8」に出展 (Y’s ARTs OLGA studio / 東京)
2020 五木村焼畑農耕のジオラマを制作(ヒストリア五木谷 / 熊本)
2021 企画展「やまと。うみと。きみと。ぼくと。」 (山都町文化の森 / 熊本)
2022 『熊本城「おもしろ」おばけナイト』舞台装飾を担当 (熊本城 / 熊本市) 春に咲く五木の花々の模型を制作(ヒストリア五木谷 / 熊本) 「虹菓子」プロデュース。小冊子の制作やパッケージデザインなど 幅広く担当(虹色不動産 株式会社企画商品)
アートに興味を持ったきっかけは?
高校生の頃、フラワーアレンジメントに惹かれ、進学を考えるタイミングで本格的に学びたいと思うようになりました。そこで、同郷の播正ますみさん(第5回香梅アートアワード)に相談しました。当時、播正さんは、人形作家というだけではなく、フラワーアレンジメント、テーブルセッティングなど、幅広く学べるスクールを主宰されていたので、そちらヘレッスンに通うようになりました。
幅広く学ばれたのですね。
トータルで様々なことを学ばせていただきましたが、特に勉強になったのは、イギリス、ドイツでの100日間の研修プログラムです。その中でも最も影響を受けたのは、ロンドンでの船上パーティーの空間演出の仕事です。飾り付けの生花を活けるための土台や器を制作し、丁寧に装飾するのです。王室の主宰だったようですが、とにかくそのスケールの大きさ、コンセプトや深いストーリー性にとても刺激を受けました。
粘土はいつ頃からはじめたのですか
粘土は18歳で出会いそれからです。播正さんのスクールでは、学びながら、粘土の講師もさせていただき、とてもやり甲斐のある毎日でした。7年後、自身の表現したいものへの想いが固まり、独立を決意しました。
粘土作家 gaju の誕生は、そのタイミングですか?
我の樹。gaju と自分に名づけ、まずは、自分が表現したいものを創って、公募展に出品したり、個展を企画したりしました。アートとして内面にあるものを表現、発表できることに、この上ない喜びを感じました。
店舗のディスプレイやドレスなども手がけていらっしゃいますね。
ウェルカムボードの創作をオーダーで受けていた頃、アートドレスの創作依頼がありました。大切なハレノヒの喜びを想い、たくさんのドレスを制作しました。店舗の空間装飾や、個人宅の壁面オブジェなど、さまざまな依頼をいただくようになりました。当時、私の中で、依頼の作品と、自身のgaju 作品には違和感があり、しかし、どちらにしても、完成後の私自身がとても喜んでいることに気づき、今は、ただ感謝の中、どれも自分だという想いで、制作しています。
銘菓「人吉桃子のももがたり」について教えてください。
副島会長が書かれた原作を読んだ時からワクワクがとまりませんでした。ディレクターからは2、3体人形を創作してもらえないか、という相談でした。しかし、どうしても全部創りたいとお願いして、川のせせらぎ、人吉の大自然の中を優しく踊っているような気持ちで、全29体が完成しました。
香梅アートアワード奨励賞を受賞した感想をきかせてください。
今年gajuとして20年目でした。これからも、自分らしくとにかく『創り続けていく』という覚悟に、改めて強く背中を押していただいたような感謝の気持 ちでいっぱいです。
今後やっていきたいことはどのようなことですか?
粘土にこだわらず、頭に浮かぶ、そのままの素材や手法での表現に挑戦したいです。ありのままのエネルギーをぶつけた大きな絵画などの壁面作品や、陶作品、アニメーションなどの動く表現など、これから挑戦したいと思っています。
香梅アートアワード概要
熊本を拠点に「くつろぎのごちそう」を提供する、「お菓子の香梅」が企業メセナの一環として創設する芸術賞。
優れた創作活動を続ける、熊本出身および在住の女性芸術家を顕彰するもの。今年度は、お菓子の香梅が維持管理している水前寺成趣園 「古今伝授の間」において、2名に奨励賞を贈賞した。
対象ジャンル
洋画、日本画、彫刻、デザイン、写真、映像、書、工芸、
ファッション、パフォーマンスなどの造形視覚芸術
選考委員
ギャラリー運営企画会社、美術雑誌編集者等を経て、1999年から国際芸術センター青森設立準備室、2011年まで同学芸員を務め、AIRを中心としたアーティスト支援、プロジェクト、展覧会を多数企画、運営する。陸前高田AIRプログラムディレクター(2013年~現在)、さいたまトリエンナーレ2016プロジェクトディレクター、緑と花と彫刻の博物館(宇部市ときわミュージアム)アートディレクター(2017年~)、他を歴任。
国内外の博物館や大学などでの勤務を経て、2001年から現職。社会教育事業としてのアートプロジェクトを考案し、アーティストと住民が年間を通じて地域資源を活用しながら表現活動に取り組む「住民参画型アートプロジェクト」を2008年から実施。地域に密着したアートプロジェクトの功罪を問いながら、地方におけるアートと美術館の可能性を探っている。人口約4300人の熊本県津奈木町が運営するつなぎ美術館唯一の学芸員。
全日本洋菓子工業会副理事長、公益財団法人熊本市美術文化振興財団評議員、熊本県立美術館協議会委員、熊本アイルランド協会会長、九州・トルコ協会会長として尽力。平成10年より「古今伝授の間」の維持管理を行っていることが評価され「メセナアワード2015 特別賞・文化長官賞」受賞。また、2015年からは、一新まちづくりの会や自治会などの皆さんとともに、熊本城下町・菓子祭りを開催している。熊本にちなんだ様々な創作舞台の企画・運営にも力を注いでいる。
平成24年11月 秋の叙勲 旭日双光章受賞
第14回となります 香梅アートアワード受賞者作品巡回展が、
ドゥ・アート・スペース 帯山店にて開催されます。
期間は 4月 8日(土)から 4月20日(木)までとなります。
ドゥ・アート・スペース 帯山店のあとは、下記日程(予定)にて
巡回展が開催されます。
ドゥ・アート・スペース 菊池店 4月22日(土)~ 5月11日(木)
ドゥ・アート・スペース 人吉店 5月13日(土)~ 5月25日(木)
ドゥ・アート・スペース 光の森店 5月27日(土)~ 6月10日(土)
※光の森店の最終日のみ17:00までの開催となります。
※各店舗の営業時間と店休日は変更となる場合がございます。