コラム
Column
和菓子の種類別食べ方マニュアル〜お茶席で和菓子を食べる際のマナー〜
お茶席でいただく和菓子は、その見た目だけでなく、味わいもまた格別です。
しかし「お茶席で出された和菓子を、どう食べたら良いのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
今回はお茶席で和菓子をいただく際の、種類別の食べ方についてご紹介します。
お茶の時間を楽しんでいただくためのヒントになれば幸いです。
和菓子の基本を知ろう〜黒文字と懐紙について〜
お茶席で和菓子を食べる際、切り分けるための楊枝「菓子切」が添えられています。
古くは日本原産の植物「クロモジ(クスノキ科)」で作られたことから、今でもお茶席などで「黒文字(くろもじ)」と呼ばれています。
毛羽立たず使い心地が良く、上品な香りが特徴です。現代では木製だけではなく、竹製やプラスチック製など、さまざまな素材で作られています。
黒文字を持つ際は親指、人差し指、中指の3本の指を主に使い、残りの指は添え黒文字に添えておきましょう。
この持ち方で和菓子を食すことが美しい作法とされています。
また、和菓子を乗せている紙は「懐紙(かいし)」と呼ばれ、和紙を二つ折りにした小ぶりなものであることが一般的。
和紙は慶事と弔事とで折り方が異なりますが、お茶の席では基本的に慶事と同様の折り方と考えて良いでしょう。
慶事・平常時において半紙を折りたたむ場合は、手前側の紙を上に折り曲げ、右側が上となるように折ります。
弔事・平常時の場合は、手前側の紙を上に折り曲げ、左側が上となるように折りましょう。
使い終わった懐紙は自分で持ち帰るのがマナーですが、黒文字も同様です。
懐紙に黒文字を包んで持ち帰ることがお茶席において正式とされています。
ただ、近年では黒文字を持ち帰ることがマナー違反だとする場合もあるようです。
主賓や招かれた側の立場を考えて、TPOに即した行動ができると良いですね。
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【和菓子の種類】
和菓子と一言で言ってもその種類はさまざまです。
今回は、一般的に分類される和菓子の種類を表にまとめました。
分類 | 特徴 | 例 |
餅もの | 餅米、うるち米およびその加工品を主原料として製造されたもの | おはぎ、赤飯、大福餅 |
蒸しもの | 生地を成形し、蒸し上げて製品とするものの総称 | 紅白蒸饅頭(こうはくむしまんじゅう)、黄味しぐれ |
焼き菓子 | 焼いて作ったお菓子 | クッキー、ケーキ |
流し菓子 | 寒天や砂糖、餡を主材料とした流動状の生地を型に流して成形したお菓子 | 錦玉羹(きんぎょくかん)、水羊羹(みずようかん) |
練り菓子 | 餡餅粉を材料とし、つなぎや砂糖を加え、強くもみ、こね、練り上げて生地とし、成形してすぐに仕上げるもの | 練切(ねりきり) |
おかもの | 別に調整した製品や、そのほかのものを組み合わせて造形した和菓子 | もなか |
干菓子(ひがし) | 水分の少ない乾燥した和菓子 | 落雁(らくがん)、金平糖(こんぺいとう)、せんべい、甘納豆 |
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生菓子(練切、羊羹、饅頭など)の食べ方
練切(ねりきり)や羊羹(ようかん)をはじめとする生菓子の食べ方は、黒文字などの菓子切を使用して、左から一口ずつ切り分けます。
一口で食べてしまうのは、多くの場合マナー違反とされています。
また、和食のマナーでは「食事は必ず両手を用いること」とされているため、利き手とは反対の手でお皿を軽く抑えるようにしましょう。
利き手と反対の手を受け皿のように構える(手皿)のは品がないようにみえ、マナー違反とされています。
【柏餅や桜餅の葉を食べるのかは本人の好み】
基本的に柏餅や桜餅の葉を食べるかどうかは、ご自身の好みで決めて問題ありません。
特に柏餅の葉は本来移り香を楽しむために使用されたものであり、かつ硬くて筋が多いうえ苦みもあるため、基本的に食べることは推奨されていません。
葉を残す場合は二つ折り程度に畳んでおくと良いでしょう。
もなかや大福の食べ方
もなかや大福はお皿を持ち上げ、菓子切で切り分けるのが難しい場合は、菓子切を使用せず手で持って食べても構いません。
大福やもなかなどの半生菓子は、基本的に手で食べるものと認識して良いでしょう。
手で持つ際は懐紙に包んで食べると手をあまり汚さず、美しい所作で食べることができます。懐紙がない場合には、お皿を持ち上げて食べると大福の粉が周囲に散ったり、口の周りを汚したりせず食べられます。
串団子の食べ方
串団子は、菓子切が添えられていた場合は菓子切を使用して串から団子を一つずつ抜き、抜いた団子を菓子切に刺して食べるのが美しい食べ方とされています。
ただ、菓子切の有無に限らず串から直接食べるのがマナー違反というわけではありません。
串から直接食べ進めると奥の団子が食べにくくなってしまいます。
奥の団子を食べる場合はまず半分かじり、それから串を半回転して残りを食べるときれいに食べることができます。
食べ終わったあと串に団子がこびりつくことがありますが、これは気にしなくて大丈夫です。
気になる場合は、懐紙を上から被せて隠すと良いでしょう。
落雁やせんべいの食べ方
落雁(らくがん)や金平糖、せんべいのような干菓子(ひがし)は、菓子切と一緒に出されることもありますが基本的に手で食べます。
大きめのものは手で割って食べますが、一口サイズのものはそのまま口に運んで問題ありません。
和菓子をもっと楽しむための基本マナー
お茶席には、和菓子の食べ方にも決まったマナーがあります。
今回は和菓子の種類別の基本的な食べ方をご紹介しました。
黒文字を使って上品にいただく生菓子、懐紙を使っていただく半生菓子、干菓子など、それぞれの和菓子に適した食べ方があります。
これらのマナーを守ることで、お茶の時間をより一層優雅に過ごすことができるでしょう。
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