2025.06.06

「誉の陣太鼓」の魅力を引き立てる、香梅独自の紙ナイフ誕生秘話


お菓子の香梅ならではの創作銘菓「誉の陣太鼓」。
その魅力をより深く、より快適に味わっていただくために挑んだのは、前例のない「紙ナイフ」の開発でした。

2004年(平成16年)の構想から完成まで、実に6年。
その裏には、お客様との約束を守り抜こうとする情熱と、工夫の積み重ねがありました。

今回は、お菓子の香梅が形にした、紙ナイフ開発の舞台裏をご紹介します。

陣太鼓に欠かせない紙ナイフ。その原点について

紙ナイフと陣太鼓

紙ナイフ誕生の原点は、お客様からのお声がきっかけでした

「陣太鼓の包装が固くて開けにくい」「個数分のナイフを付属してもらえないか」など、当時さまざまなお声をいただきました。

この時は、まだ紙ナイフが誕生しておらず、プラスチック製ナイフを使用していました。今でこそ紙ナイフは陣太鼓の個数分をお付けしていますが、10年以上前(※)までは販売数に対し、およそ17%しか付属されていなかったのです。

※紙ナイフの使用は2010年12月から。

個数分、ナイフを付けようとするが…

プラスチック製ナイフということで、やはりコスト面に難があり、普及が進んでいなかったのだと思います。

しかし、お客様のご期待に寄り添うためには、コスト面には目をつぶるしかありません。

当時の担当者は、まずは個数分のプラスチック製ナイフを付属させようと図りました

ナイフを個数分用意し、箱へ入れ……。と、ここで蓋が閉まらないことが発覚!

プラスチック製だから厚みがあり、個数分を同梱するとかなり嵩張ってしまうという問題に直面したのです。

全本数が収まるように、箱を作り直す案もありました。

しかし、これは箱以外にも包装紙や梱包する段ボール箱に至るまで、すべての資材のサイズを変更しなければなりません。

プラスチック製ナイフを増量するコストと比較にならないことから、この案は泣く泣く取り下げられることになったのです。

重ねる試行錯誤

いただいたお声の中には、誉の陣太鼓に関するご意見もいくつか含まれていました。

例えば「チーズのようにテープで簡単にカットできないのか」など、開け方についてのご意見を多くいただきました。

プラスチック製ナイフの同梱を断念したあと、誉の陣太鼓の箱をナイフの形にくり抜く方法も試してみました。

しかし、衛生的に厳しいことが分かり、これもまた断念することに。

紙ナイフへの第一歩

行き詰まりを感じていたある日、紙スプーンを手がける製造メーカーの担当者が私たちの元を訪れました。

悩みを持ちかけると、相手は即座に「ぜひ一度、挑戦させてほしい」と力強く返してくれたのです。
その一言が「紙ナイフ開発」への第一歩になりました。

また紙は将来、再生資源として大きく飛躍するとの説明もあり、開発への大きな後押しにもなりました

一歩ずつ、失敗を重ねて得た手応え

陣太鼓をフィルムごと紙ナイフで切るところ

製造メーカーが最初に届けてくれた試作品。

それは平たくて小さな、まるでつまようじのような形状をしていました。

プラスチック製ナイフの形を縮小し、紙素材で再現したもの。
やはりと言うべきか、誉の陣太鼓のフィルムを切ろうとしてもうまくいかず、ただ破れてしまうばかり

もちろん、きれいに4等分することなど到底かないませんでした。

新たなナイフに求めていたのは「フィルムをスムーズに開けられること」「誉の陣太鼓を十文字に美しく4等分できること」

この2点を両立することが、最大の難所でした。

紙だからこそ、工夫が生きる

それでも、担当者たちは決してあきらめませんでした。

何度も打ち合わせを行い、試行錯誤を繰り返し、改良を重ねていきました

例えば、手元の一部に「折り」を加えることで、力が一点に集中する構造にし、刃の部分にはノコギリのようなギザギザを施し、切り込みやすさを追求するなど。

素材は紙でも、使い勝手ではプラスチック製に負けないナイフを目指しました。

紙だからこそできる柔軟な改良を重ね、そのたびに紙ナイフの機能性は向上していったのです。

社長の一言が導いた、真のユーザー視点

何度も試作を重ね、ついに「これなら」と思える紙ナイフがようやく形になりました。

プロジェクトが動き出してから、実に3年。
開発は、いよいよ最終局面へ向かいます。

完成させた試作品を携え、製造メーカーの担当者と共に社長へプレゼンテーションを実施。

これで承認されれば、紙ナイフがお客様の元へ送られることになります。

プレゼンで指摘された、もう一段深い思いやり

紙ナイフを前に、社長の口から飛び出したのは想定外の指摘でした。

「この紙ナイフで、お客様にどんな価値を届けられるか」

「『切る』だけで終わっていないか」

商品を届ける体験としての完成度が問われたのです。

この時、あらためて当時の担当者たちは決意したに違いありません。

どんなに時間がかかっても、お客様に「使ってよかった」と思っていただけるものを作りあげる

そうした一念が、このプロジェクトを次の段階へと押し上げ、今のモノづくりへとつながっているのでしょう。

社長のアイデアが形に──紙ナイフはこうして完成した

誉の陣太鼓と紙ナイフ

ただ箱の中に入れるだけではなく、何か付加価値をつけることができないか。

社長からの指摘を受けて、担当者は今までとはまた異なる視点から紙ナイフを見つめました。

新たな視点から追求された紙ナイフは、単にカットするだけの道具ではなく、箱の強化の側面も持ち合わせた新たな姿に生まれ変わりました

同梱された紙ナイフは、箱の強度を保つために使用していた底面の台紙の代わりとなり、省資源化と、それに伴うコスト削減にもつながったのです。

製造メーカーの現担当者から「今でこそSDGsdでの環境保護活動など、世の中の意識は高まっていますが、お菓子の香梅さんは2010年(平成22年)から積極的に取り組まれており、その意識の高さに感銘を受けました」と、お褒めの言葉をいただきました。

私たちお菓子の香梅はこれからも、環境に優しい企業として、より良い未来づくりに貢献してまいります。

日本初の「紙製ナイフ」は香梅にあり

切る・刺す、両方の機能を備えた紙ナイフ。
いかに、お客様へ価値ある時間をご提供するか。

お菓子の香梅が考える、お客様ファーストの視点と、製造メーカーの知見や技術力が重なり合い、唯一無二の形が完成しました。

実はこの「紙製ナイフ」、日本初の代物!
紙スプーンはあっても、紙ナイフは存在していなかったのです。

完成までにかかった6年の歳月。
今では、すべての「誉の陣太鼓」にこの紙ナイフが同封され、お客様の元へと届けられています

これからも「一手間」に誠実でありたい

和菓子を作る職人の手元

お客様との約束を、道半ばで終わらせない。

その思いが、紙ナイフという小さな(ある意味では大きな)形となりました。

これからも私たちは、お客様の声を真摯に受け止め、さらに上を目指す姿勢を貫きます。

お届けするのは、お菓子だけではありません。

そこに込めた細部へのこだわりや思いまで含めて、お菓子の香梅らしさとして届けていきたいのです。

すべてはお客様のために。